Wa-luck(ワラック)

2019.7.23
オススメ おたすけ

輝く生活を創造したい(佐藤優心)

青年会あらきとうりよう教会

 
【引用:あらきとうりよう 274号 「若き挑戦者たち」(P.32~41)】

輝く生活を創造したい(佐藤優心)
 

「山の仙人ではなく、里の仙人に」をモットーに掲げ、地域に根差したおたすけに日夜奔走しているのは、胎内分教会二代会長・佐藤優心さん(三十二歳)。現在、教会長として教務に励む傍ら、二十四歳で起業した清掃会社の代表を務めている。従業員の多くは以前、自閉症や引きこもり、記憶障害など、さまざまな社会的ハンディを負っていた若者たちだ。彼らは現在、教会に住み込みながら御用にいそしむ一方、清掃作業員として従事し、佐藤さんを支えている。新たなおたすけの在り方を模索しながら日々奮闘する若き教会長の取り組みを追った。
 

 
二月半ばの新潟空港の気温は五度。日本海から吹きすさぶ寒風が肌を刺す。

教会のある新潟県新発田市は、越後平野の北部に位置し、県都新潟市に隣接する中核都市。江戸時代には十万石の城下町として栄え、現在も歴史的遺産を町の随所に留めている他、四季折々の豊かな自然に囲まれている。

空港から県の内陸部を縦断する国道二九〇号を車で小一時間ほど北上すると、うっすらと雪化粧が施された広大な田園地帯が広がる。程なく、道路の脇から、こちらに向かって手を振る若者たちの姿が目に入った。佐藤優心さんと教会住み込みの青年たちである。

「わざわざこんな季節に来ていただいて恐縮です。本当に辺ぴな所でしょう? 人よりも動物のほうが多いくらいなんですよ」。佐藤さんは冗談を交えながら、温かく迎えてくれた。
 
 
内分教会は昭和六十三年、教祖百年祭へのお供えとして部内教会を御守護いただこうという、大教会の打ち出しに応えて設立された。しかし浄土真宗の信仰が根強く残る土地柄ゆえか、道はなかなか伝わらなかった。

七年前、祖父である初代会長・利中さんの出直しに伴い、佐藤さんが二十五歳の若さで二代会長に就任。それからというもの、教会長として、遮二無二おたすけに駆けずり廻ってきた。その結果、会長に就任した当初、わずか数人しか集まらなかった月次祭に、今では毎月三十人ほどの参拝者があるという。

教会には現在、初代会長夫人である祖母・テルコさん、母・初江さん、妻・あゆみさん、長女・弘実さん、次女・芳実ちゃん、三女・心実ちゃん、長男・真実君の他、三人の住み込み青年を含めた計十一人が暮らしている。この日は近所に住む青年たちの姿もあり、外気の冷え込みとは裏腹に、教会は若者の活気に満ちていた。

 

清掃業から学ぶこと

階にある十四畳の参拝場の中央では、石油ストーブが赤々と燃えている。ぐるりと見渡すと、築五十年の建物はおおむね相応の見栄えだが、献饌案に並べられている三方だけは真新しい。最近、新調したのかと尋ねたところ、佐藤さんは「いいえ、あれも教会ができたときから、かれこれ三十年使っているものですよ」と笑みを浮かべる。
 

アク抜きされた三方(写真左)とされていない三方(写真右)
 
聞けば、新品のように磨きがかったこの三方には、通称、アク抜きという処置が施されている。特殊な薬品に浸けてから磨くことで、つやが出るのだという。古いものと並べると、その違いは一層際立つ。

アク抜き用の薬品は、佐藤さん自らが配合したもの。二十四歳で清掃会社を立ち上げて以来、その知識や技術を深めようと、同業者による各種セミナーに積極的に参加しているという。その他にも、現場で培った経験を活かして、さまざまなクリーニングを行っている。

「これを見てください」と言って、佐藤さんがスマートフォンを差し出した。画面の写真には、大きめの浴槽いっぱいにヘドロのようなものが浮いている。

「すごい光景でしょ。これ、詰所の浴槽なんですよ。給湯タンクも含めて、全てクリーニングさせてもらいました。普通に洗っただけでは落ちない頑固な汚れも、それに適した処置を施すことで、見違えたようにきれいになります。人間もこれと同じだと思うんです。心のほこりやいんねんをきれいに拭い去ることで、生まれ変わることができる。この仕事から学ぶことは本当に多いんです」。

佐藤さんは真っすぐな目で語る。

 
 

ブレイズライフクリエイター

いて通されたのは、一階にある客間。床の間と六畳の空間は、日当たりが良いせいか、どこか温かみがある。皆が座に着くと、スペースはたちまち埋まった。

「実はこの部屋、三年前にリフォームしたんです。あちこち傷みがきていて、ネズミは出るわ、虫は出るわ、以前はとても人が居られるような場所じゃなかったんですよ。そこを教会に繋がるみんなで、全てひのきしんで改装したんです」。佐藤さんは部屋のあちこちを指差しながら、ビフォー・アフターの様子を楽しそうに説明する。

名刺を見せてもらった。肩書には「ブレイズライフクリエイター(以下、ブレイズ)代表」とある。佐藤さんが経営する清掃会社だ。その精神は、名前の通り〝輝く生活を創造する〟
ことだという。

 

 

在の従業員は八名。事務関係は妻のあゆみさんが担当している。毎日四、五件の依頼が入っており、その作業内容に応じて作業員を派遣しているという。彼らの多くは、自閉症や引きこもり、記憶障害など、それぞれが人生の苦難に見舞われる中、紆余曲折から教会に足を運ぶようになった信仰初代だ。佐藤さんは彼らに対して、教会長として道の信仰に誘う一方、会社に雇用して社会復帰に導くという形で、たすけの手を差し伸べてきた。

主に内装関係を担当している岩澤晃さん(二十六歳・よふぼく・教会住み込み)。聞けば、学生時代は引きこもりがちだったという。転機となったのは二十歳のとき。職を探していたところ、たまたま父親の知人のつてからブレイズを紹介された。

実家が他宗教を信仰していたこともあり、岩澤さんにはもともと宗教に対する反発心があったという。しかし、家族ぐるみで親身に接してくれる佐藤さんを次第に慕うようになり、二十三歳のときに初席を運んだ。その後も毎月欠かさずおぢば帰りを重ね、おさづけの理を拝戴。今では月次祭の調饌などを率先して引き受ける、教会活動の主力の一人だ。

「教会に住み込んだ頃、一度逃げ出したことがあったんですが、そんな私を会長さんは温かく迎えてくれました。初めておぢばへ帰参したときには本当に感動して、帰りの車の中で自然と涙が出たのを覚えています。会長さんは私にとって頼れる兄のような存在です」と岩澤さん。佐藤さんとの軽妙な掛け合いは、確かに兄弟のようだ。
 

左から岩澤晃さん、宮下知也さん、慎也さん。
 
宮下慎也さん(三十二歳・よふぼく)・知也さん(二十六歳・よふぼく・教会住み込み)兄弟も、教会には欠かせない人材だ。実家が教会近辺にあり、佐藤さんとは昔なじみだという二人。教会に繋がるようになったのは六年前、立ち上げたばかりのブレイズに、弟の知也さんがアルバイトとして加わったことにある。それまで仕事が長続きしなかったという知也さんだが、熱心に仕事に打ち込むようになり、その後、勧められるままに修養科を志願した。

その中、弟の変わりようを不思議に思った兄の慎也さんと母親のみい子さんが、知也さんに会うためにおぢばに帰参。二人とも初めて聞く神様の話に感銘を受け、以来、教会に日参するように。程なく別席を運び、よふぼくの仲間入りを果たした。

十五歳のときに患った脳梗塞の後遺症で、記憶障害を持っている慎也さん。現在、障害者枠雇用として某ショッピングモールに勤めている。「会長さんから初めておさづけの取り次ぎを受けたとき、頭の中にかかった靄がさーっと晴れたような気がしたんです。それから教会に通ううちに、職場でも『最近、明るくなったね』と言われるようになり、評価も変わっていきました。全てこの道の信仰のおかげです。今は、日参とひのきしんが毎日の楽しみになっています」と、慎也さんは目を細める。