Wa-luck(ワラック)

2019.10.25
オススメ 子育て おたすけ

子ども食堂 〜教会に新たな風を〜 vol.1(福祉のひろば)

福祉のひろば子ども食堂

福祉のひろば 第15号より
(2018年4月25日)

 

今回の特集は、子ども食堂について取り上げました。子ども食堂は、子どもやその親、および地域の人々に対し、無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供するための活動です。2010年代頃よりテレビなどマスメディアで多く報じられたことで動きが活発化し、孤食の解決、子どもと大人たちのつながりや地域のコミュニティの連携の有効な手段として、日本各地で同様の活動が急増しています。
地域に根差す活動として子ども食堂に取り組む方々にお話しを伺いました。

 

子ども食堂 〜教会に新たな風を〜 vol.1


市本 貴志(いちもと たかし) さん

〔プロフィール〕
天理市議会副議長 NPO法人地域支援センター副理事長 
天理教旭日大教会ようぼく
平成28年2月に天理こども食堂を立ち上げ、市内全9校区での開催を目指して奮闘中。

 

はじめに

 子ども食堂は一般に貧困問題に対する取り組みと思われがちですが、私は子どもの居場所づくりの活動でもあると思っています。最終的な目標は、地域コミュニティの掘り起こしにつながればと考えています。

 私は母子家庭で育ちました。母は遅くまで働いており、いつも帰りは夜になっていました。そんなとき、「家に晩ご飯を食べに来ていいよ」と言ってくださるお宅が近所に2、3軒あり、今から考えると本当にありがたいことでした。しかし現在は、隣近所にどんな人が住んでいるのか分からない、挨拶をすることもない、という寂しい世の中になっています。さらに家族のあり方が昔とは変わってきており、ひとり親家庭が非常に増えてきているのも事実です。親が遅くまで働きに出ており、家族揃ってご飯を食べられないという状況も増えています。そういう意味で言うと、今は地域コミュニティをもう一度確立するにはいい機会だと考えます。
 

子ども食堂を始めるには

 子ども食堂を始めるときには、行政への申請の義務はありません。ただ、なにかあってはいけないので、保健所への事前申請はしておいた方がいいと考えます。また、最近では子ども食堂の活動が行政にも認知されてきているので、行政によっては申請書類が用意されているところもあると聞いています。

 ここからは私の考えになりますが、子ども食堂をいざ始めようと思っても、一人ではできない部分が出てくると思います。ですから、地域の方々や学校との協力が必要になります。学校と協力することは難しく感じるかもしれませんが、子どもたちの状況を一番見ているので、協力を仰ぐべきだと考えます。さらに、行政や社会福祉協議会とも連携し、民生委員の方や自治会にも理解いただくことも大切だと思います。

 広報の方法ですが、「天理こども食堂」の場合は学校に協力していただいています。学校の理解があれば、子どもたちにチラシを配布してくれ、申込書の回収なども行ってくれます。また、教員の皆様にも知らせることになりますので、興味を持たれた方が子ども食堂に来てくださることもあります。行政も同じで、市の関係部署に知らせておくと、見学に来てくださることもあります。学校に行くと、家庭環境の事など地域の現状を教えてくださいます。もちろん個人情報保護のため、名前までは聞いていません。事前にそういった情報をいただけるなどメリットは大きいので、学校との連携は大切だと感じています。

 子ども食堂は毎日開催できればいいのですが、運営する人たちも本職がある方がほとんどであります。しかし、少なくとも月1回以上の開催が必要だと思います。「天理こども食堂」では、基本的に佐保短期大学の調理学教授の協力のもとで温かいメニューを作り、みんなで食べることを基本としています。

 

子ども食堂の役割

 子ども食堂の参加者はひとり親家庭や共働きの家庭が多く、親が働いているので参観日など学校行事に出席できないため、親同士の交流もできていない様です。子ども食堂はそういった家庭の交流の場にもなっていると思います。中でも父子家庭のお父さんは、学校での様子をほかの保護者から聞くことができたと喜んでおられます。

 また、子ども食堂を通して地域の現状を知ることができ、現代の社会課題が見えてきます。たとえば離婚問題。さまざまな状況下で離婚そのものが悪いことだとは認識していません。しかし子どもが犠牲になるのは違うように思います。祖父母に子どもを預けてどこかへ行って未だに帰ってきていないなど、そのような家庭をこれまでに何組も見ています。県内や全国になるとどれだけの問題があるのか、想像がつきません。そういう意味でも、地域の中で安心できる、安全な居場所として、子ども食堂の役割が重要になると考えます。
 

 

「食べること+α」

 私たちが運営している「天理こども食堂」は、平成28年2月に立ち上げました。基本は事前申込制ですが、当日の参加も受け入れています。初回に苦労したのは、事前申込が約30名のところに、約70名が参加したことです。幸い食数の調整がきくメニューでしたので、なんとか対応できましたが、今でも当日参加の可能性も考えて多めに食事を作っています。

 天理こども食堂では、「食べること+α」という活動をしています。ただ食事をともにするだけでなく、子ども食堂の時間の中で教育支援もしています。特別難しい勉強を教えるのではなく、楽しみながら勉強ができるようなものを組み込んでいます。たとえば、福祉施設で作っておられる、各都道府県の形をしたクッキーを調達し、九州地方はチョコ味、中国地方は抹茶味など、各地方で味を変えて、混ぜておきます。それを各グループが日本地図の上にパズルのように置いていきます。「完成しないと食べられない」と決めていたので、子どもたちは悩みながら、真剣に完成を目指していました。ほかにも県内の陸上記録を持つ方に賛同いただき、ランニング教室などもしました。

 最近ではパソコン教室も行いました。(写真参照)将来、プログラミング教育が小学校の必須授業になっていくといわれています。しかし子どもたちの中にはスマートフォンを触ったことがあっても、パソコンを触ったことがない子が多いようです。そこで専門の先生に機材一式を用意してもらい、プログラミング教育を行っていただきました。

 子どもの夢や可能性は千差万別だと思います。たとえば走ることが好きな子がマラソン選手になるかもしれませんし、パソコンを触ることでプログラマーになる子もいるかもしれません。「食べること+α」の活動を通して、子どもたちが将来の夢を持つきっかけの一助になればと思っています。
 

 

子ども食堂に必要なもの

 子ども食堂を始めるには、会場、食材、人員確保が必要になります。会場は地域の公民館を勧めています。公民館は地域に知られている公の場所であり、会場費もいらないところが多いためです。

 食材集めは、おそらく始めた皆様が一番苦労するところだと思います。私も最初は農家の方々へお願いに回りました。現在では活動を理解してくださる方が増えて、農家の皆さんが、お米や野菜を提供してくださるようになりました。メニューに関しては、奈良の佐保短期大学に協力していただいています。私が副理事長を務めております「NPO法人地域支援センター」の職員と佐保短期大学の教授が知り合いで、一度NPO法人と行政、大学側で意見交換の場を作り、大学に協力いただけることとなりました。

人員確保については、ボランティアを募集し、多くの方々にご協力いただいています。
 

今後の展望、活動の展開

 近年、食事を取っているのに栄養失調になる「新型栄養失調」が問題になっています。栄養満点の食生活をしている母親から産まれる子どもと、栄養が不足している母親から産まれてくる子どもでは、発育に大きな差が出るといわれています。だから子ども食堂を通して、まず「食」を深い意味で考え、栄養価の高いものを子どもたちに食べさせてあげたいと思っています。さらに満足に食べられない子どもがいる反面、食べ物を大量に捨てているという社会の矛盾を、少しでも改善できる取り組みをしていきたいとも思っています。

 また、今の子ども食堂とは別に、オープンにしない子ども食堂を作ろうと考えています。地域の子どもたちの中には、問題を抱えながら子ども食堂に来られない子も多くいると思います。そういう子どもたちにも来てもらい、栄養価の高い食事を食べてもらえるような場所を作れたらと考えています。
 

NPO法人地域支援センター

 「NPO法人地域支援センター」は、奈良県知事の許可を受け、奈良県全体の地域課題に取り組む団体です。子ども食堂のほかに、お仕事体験フェスティバルというものも開催しています。これは警察官や消防士といった職業をはじめ様々な体験をするもので、実際にパトカーや消防車も持ってきてくださり、民間企業の方々も多数ご協力をしてくださっています。

 さらに、食品ロスを減らすことと、食べることに関して考えることを目的とした「フードバンク奈良」が立ち上がりました。代表には、天理大学教授の渡辺一城先生が就任くださっています。大量生産、大量破棄による食品ロスは大きな社会問題となっています。そのロスを減らし、子ども食堂や福祉関係施設等に提供できるようにするための取り組みを行っています。多くのフードバンクは余った食品を企業から頂くかたちですが、「フードバンク奈良」では各家庭で余った食品を集める活動も進めています。自治体によっては市町村で集めているところもあるので、奈良県の各市町村と連携できればいいと考えています。

 奈良県でも食に関するイベントをやっていますが、そこにフードバンクのコーナーを作り、余った食品を集めたり、参加者からも食品を引き取れるような取り組みもできればと思っています。
 

地域課題に取り組む

 世の中にはさまざまな家庭があり、個々にいろいろな事情を抱えておられます。子ども食堂をしていると、そうしたところが見えてきますので、そこをできる限り対応していきたいと考えています。将来的には、子ども食堂もフードバンクも必要としない地域社会になるのが理想だと思います。

 さらに、子ども食堂の活動も含めた地域支援センターの活動をしていると、たくさんの地域課題が見えてきます。各地域で特徴や成り立ち、地域性も違いますので、そこから生じる地域課題もさまざまです。ですから、これからも地域課題に積極的に取り組んでいこうと思います。
 

 

読者の皆さんへ

 天理市が災害にあったときに、「天理教災害救援ひのきしん隊」に大変お世話になりました。本当に感謝しています。私もようぼくですが、お道の教えの素晴らしさを再確認いたしました。

 天理教の教会も地域によってさまざまで、おたすけの現場もそれぞれ違うと思います。そのような中で、教会が地域に根差して活動していこうとする姿勢は、本当によいことだと思います。私は、教会はいつも開かれていて、入りやすい場所だと思っています。しかし、世間の方々には天理教の教会を知らない方もたくさんおられると思います。子ども食堂をきっかけに地域の皆さんにとって、天理教の教会が安心で安全な拠り所になれば素晴らしいことです。そして、お道の教えに触れてもらい、地域の方々に元気になってもらうことで、一れつきょうだいの陽気ぐらしに近づいていくと思います。

 皆様のご活躍を心から願っております。ありがとうございました。

 

NPO法人地域支援センターホームページ(facebook)
https://m.facebook.com/chikishienncenter/

 

天理教布教部福祉課
福祉のひろば 第15号より